雑音日和

教祖になるのが夢です。

二本棒のクエント

 グラナダに秋がやってきた。地中海地方の乾いていた空は、ときどき雲に覆われるようになった。40度近くの猛暑から、一気に10度ぐらい気温が下がってしまうものだから、逆に肌寒いくらいだ。

 

 店頭ではガスパチョやサルモレッホといった夏の風物詩たちが、我先にと各家庭に駆け込むようにして、安売りセールの赤い札を掲げている。バケーションで外に出ていた人々は、次々と日常に戻っていく。

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 最近、箸を使うようになった。ピソには箸がたった一膳しかない。それも東洋人は私しかいないので、多分ほぼ独占状態で使っているのだろう。炒め物をするときなんかは、どうしても箸じゃないとできないので、食べる前に使ってしまう。

 

 つまりその貴重な一膳は、「調理用」ということになり、食事用にはフォークとナイフ、スプーンで食べるしかない。日本語でレシピ検索をすると、ほとんど醤油を使った料理がヒットするので、必然的に日本食テイストになる。したがって、どうしてもお箸を使って食べたくなる。

 

 そんなこんなで、私は猛暑を乗り切るために、よくパスタに重曹を入れて、冷やし中華のようなものを作っていたのだが、箸で食べた夏の終わりの冷やし中華は最高だった。

 

 それからのこと。箸を調理に使ったあとで、それを洗ってまた食事に使うというのをやり始めた。あ、自分のを買った方が早いか。

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 それにしても、箸を使って食べるって、不思議な文化だと思う。時々私たちは日本食バルに行くのだが、豪快にもご飯の上にお箸をブッ刺して駄弁っている友達を、「まぁ普通はそうするよね〜」っていう目で見ていることがある。

 

 お箸の持ち方に興味を持った人には、「中指を真ん中に挟んでこうこう」という感じで、どの家庭でもオカンに厳しく言われるような言葉を再生している。

 

 そもそもどうして、あんな棒切れ二本でご飯を食べようなんて思ったんだろう。ナイフ、フォーク、スプーンだったら、形状からして「切り分ける」「つき刺す」「掬う」という用途がひと目で分かる。どう考えても合理的に設計されているのは、こっちの方だと思う。

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 昔の人の考えることは、やっぱりよくわからない。最初にお箸を使った人は、相当切羽詰まっていたのだろうか。食べ物があるのに、使えるものが棒切れだけだったとかね。でもそれだったらもう、いい加減手を使わないか普通は。

 

 究極的に混み行った状況でないと、こんな芸当を思いつくのはありえないと思う。私の想像力では到底追いつきそうにもない。

 

 しかし妙な形をしているにも関わらず、やっぱり一番手に馴染んでしまうチョップスティック。少なくとも日本人は、大体の食べ物をこの棒切れで食べることができる。しかも綺麗に食事ができるところが、気に入っているところだ。

 

 気になるなぁお箸の起源…。ムイラーロ。